2020年06月19日

【KTWRのDRM受信に挑戦してみよう】(DRMの基本)

2020年4月よりKTWRのDRMによる日本語放送が開始されました。ここでは、DRMの基本知識を説明します。

(1) DRMとは何か?

 DRMは中波、短波帯のラジオ放送のデジタル化のために誕生した技術で、Digital Radio Mondialeの略称です。欧州の電気通信標準化(ETS)の規格として定められています。(注意:日本では放送方式として認められていないため、規格化されていません)

 アナログ技術では実現できなかった多くの特長を有し、高いコーディングレートを利用した音声符号化や誤り訂正技術を活用し、音質の向上と共に伝送能力を向上させています。

 古くから、LF、MW、SW、VHF帯の変調方式は、AMとFMによるアナログ方式が使われていましたが、DRMは、同じ周波数帯域でデジタル変調を実現する方式として誕生しました。このうち、DRMは2つに分かれます。一つは、HF帯(長波・中波・短波帯)までのDRM30と、VHF(FM)帯用のDRM+です。本記事では、以後、前者のDRM30のみを扱い、DRMの名称で説明します。
DRM_2_1.png



(2) デジタル多重化方式

AMのアナログ変調では、その信号帯域として 9kHz または 10kHz (最小 4.5kHz、最大 20kHz)を占有します。DRMによるデジタル伝送は、AMによるアナログ変調方式との共存が考えられているため、占有周波数帯域はほぼ同じです。

ここで、データを多重化するためにOFDM (orthogonal frequency division multiplex) (直交周波数分割多重変調)方式が使われます。デジタル変調方式としては一般的な技術であり、限られた周波数幅の中で、複数の搬送波を使ってデータを同時伝送する技術です。音声を含む全てのデータをまとめてデジタルデータとして伝送させることができます。

さらにフェーディング対策として、タイム・インターリーブ(時分割)を採用し、OFDM処理に必要なさまざまなパラメータを、タイミングを適切に振り分けながら送信します。


(3) デジタル変調方式

(2)で解説したOFDMは、複数の搬送波で多重伝送する技術のことでした。その一つ一つの搬送波に乗せられるデータの変調方式は規定されていません。DRMでは、そのために QAM(直交振幅変調)が使われます。QAMには 4QAM、16QAM、64QAMなど多数の種類があり、わかりやすくいえば、QAMの数値が多ければ多いほど、高品質かつ高速にデータを伝送することができます。

DRM30 では MSC を送信するために 16QAM または 64QAM が採用され、送信ターゲット・エリアへの伝搬状況に合わせて、選択します。当然のことながら、16QAM よりも 64QAM の方が、同じ周波数帯域幅でも高品質なデータを送信することができますが、ノイズが多い場合は、受信が困難になりやすい欠点があります。KTWR日本語放送では、MSCを 16QAM で送信しています。中国国内向けに放送されているDRMでは、時間や周波数によって異なりますが、高音質で放送する場合は、MSCを 64QAM で送信します。SDCは4QAMです。

なお、デジタル信号の大きな特長でもある誤り訂正方式としては、ビタビ方式が採用されていますが、説明は省略します。


(4) デジタル音声方式

DRMに使われるデジタル音声方式として MPEG xHE-AAC と AAC が使われます。


(5) DRMエンコーダ(送信データ生成)

DRM用の送信データを生成するには、次のようなDRMコンテンツ・サーバーが使われます。このDRMコンテンツ・サーバーは次のようなもので構成されます。

DRM_5_2_1.png


(5-1) DRM Audio Encoder / Data Service Encoder

音声のデジタル化を担当するのが DRM Audio Encoder であり、その他のデータは Data Service Encoder が担当します。その2つのデータを DRM Multiplex Generator を使って、1つのデータとして束ねます。

(5-2) FAC/SDC/MSC

MSC (Main Service Channel) は、デジタル化された音声とデータを組み合わせたものです。SDC (Service Description Channel) は、音声やデータをデジタル化するために必要な情報や時間情報です。FAC (Fast Access Channel) は、多重化されたDRM信号からすばやくデータを取り出すために必要な最も基本的な情報です。

(5-3) MDI/DCP Interface

多重化されたデータを転送するプロトコル(伝送順序を定めた規則)として、MDI (Multiplex Distribution Interface) または DCP (Distribution and Communications Protocol) と呼ぶ伝送方式が使われ、MSC、FAC、SDCを一定時間ごとに区切って束ね、適切な順序で送信します。

送信時のデータ列は下図のようになっています。これを伝送フレーム (transmission frame) と呼び、1つのフレームの単位を「スーパーフレーム」と呼びます(モードの違いについては後述)。

DRM_4_1_FrameStructure.png


(5-4) DRM送信機の基本構造

次の図は、送信すべきデータを並べ、DRMの電波を出力するまでの基本的な流れを示しています。

DRM_4_2_Protocol.png



(6) DRMによるデジタル伝送

(6-1) DRM伝送モード

短波・中波で使われるDRMを DRM30 と呼び、FMで使われるものを DRM+ と呼びます。それぞれに伝送モードがあり、合計して5個のモードがあります。このうち、KTWRの日本語放送で使われているのは DRM30 のモードBです。

このモードBは主に短波放送を想定したモードです。中波の場合は、伝送レート(デジタル送信の速度)を上げやすいため、モードAが選ばれますが、日本周辺で受信するチャンスはほとんどありません。なお、送信帯域幅(電波を送信するために必要な周波数の幅)( Bandwidth options ) としては、短波の場合は、主に 10kHz が使われます。

DRM_5_1_Modes.png


(6-2) メタ・データ

デジタル・データに乗せられているデータとして、最も基本的なものは、放送局名や番組の内容を示すメタ・データと言えるでしょう。それらのデータは、FAC と SDC に乗っています。

DRM信号復調用のフリー・ソフトウェア Dream を利用して、DRMのデジタル信号からデータを表示させることができますが、そのうち、局名を示す部分を「サービスラベル」、放送言語を示す部分を「サービス・ランゲージ」、放送の種類を示す部分を「プログラム・タイプ」と呼びます。以下にKTWR日本語放送の例を示します。言語として日本語で、放送の種類として宗教番組であることがわかります。

DRM_5_1_Label.png


(6-3) デジタル音声

DRMで使われる音声は、2つの方式のいづれかで、デジタル化されます。AAC と xHE-AACと呼ぶ方式で、xHE-AAC の方が低レートで高音質なデジタル音声を実現します。また、オプションとして、5.1chのサラウンド放送にも対応します。

ただし、多くの DRM 放送では現在も、歴史の長い AAC が使われ、KTWR日本語放送も AAC によるモノラル(サラウンドなし)放送です。

(6-4) スライドショー

DRMではメタ・データや音声の他に、テキストによるデータ送信や「スライドショー」と呼ぶ画像伝送も可能です。スポーツ中継などでのスコア表示などの利用を想定したものです。

KTWR日本語放送では、復調用ソフトウェア Dream の機能を使って、グアムの風景を写した静止画像が送られています。30分の放送で、複数の画像を送ることがあります。

0430_slide2.png



引き続き、【KTWRのDRM受信に挑戦してみよう】(DRMの受信手順)へどうぞ。
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ラベル:KTWRDRM
posted by ラジオの声 at 06:00| 短波放送 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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