2020年11月29日

【KTWRのDRM受信に挑戦してみよう】(DRM受信の手順)

2020年4月よりKTWRのDRMによる日本語放送が開始されました。ここでは、DRM放送の受信手順を説明します。

SDRを利用したDRMの受信の手順については、2015年に[再]USBドングルでSDR受信機(その7) DRM受信でも紹介されたことがありますが、ここでは、最新情報を掲載します。
HDSDR 2.80 について、一部の説明を更新しました('20.11.29)。

(1) 必要なもの

(1-1) SDR受信機

 もし、これから初めて入手する、という場合であれば、過去に筆者が紹介したものは、いかがでしょうか?

電子工作マガジン2019年冬号 
特別企画「BCLと世界の放送局」第1回
『2019年に注目された SDR 受信機』(p.129)


電子工作マガジン2019年10月号別冊
「令和版BCLマニュアル」
第6章/受信設備のすべて
「廉価で入手可能な RTL-SDR による短波受信と受信サーバーによるスマホ短波受信」(p.159〜164)

にて紹介したSDR受信機、または、RTL-SDRとHFコンバータとの組み合わせをお勧めします。

 いづれもWindowsパソコンとの接続が必要となりますので、SDR受信機のマニュアルに沿って、パソコンへソフトウェアやデバイスドライバをインストールする知識が必要となります。

(1-2) 短波用外部アンテナ

 送信所はグアムにあり、アナログ受信については、内蔵のロッドアンテナでも受信が可能ですが、DRM放送の場合は、屋外にアンテナを設置しての受信が望ましいと思われます。

 SDR受信機を利用されているリスナーさんの多くが、外部アンテナを利用しています。なお、屋内でアンテナ設置を考えている場合は、低雑音で人気のあるAirspy 社の Youloop (ユーループ)という新しい概念のアンテナがあります。自作も可能ですが、組み立て品は海外からの通販で実売4〜5千円です。ただし、鉄筋・鉄骨家屋の場合、屋内設置での受信感度に限界がありますので、ご注意下さい。

(1-3) Windows用SDRソフトウェア(推奨 HDSDR 2.76a

 SDR受信機を操作するためのソフトウェアが必要です。ドイツ在住の有志が開発を続けているフリー・ソフトウェア HDSDR をお勧めします。ダウンロード・サイトは http://www.hdsdr.de/ です。2020年6月現在、同サイトから提供されているのは HDSDR の最新版 2.80 です。同じバージョンが2種類提供されていますが、受信機としての利用の場合は、どちらでもかまいません。ただし、これらの最新バージョンは、筆者が推奨するバージョン 2.76a ではありません。

 そのバージョンの配布が終了してしまったため、筆者が利用しているSDR受信機のメーカー SDRPlay社のダウンロード・サイト(https://www.sdrplay.com/downloads/)にある HDSDR – V2.76A (13TH JUL 2018) をお勧めします。同社の製品向けに多少カスタマイズされていますが、RTL-SDR 及び SDRPlay社の受信機を利用する限りにおいては、動作に問題ありません
 他社製のSDRについては、それぞれのメーカーへお問い合わせください)。
配布は終了しました。SDRSharpや SDRuno などの他社アプリもご検討下さい。('20.08.31) HDSDR 2.80でもOKです。('20.11.29)


(1-4) ExtIOプラグイン

 異なるメーカーのSDR受信機を操作するにあたり、一つのソフトウェアで異なるハードウェアへアクセスするための仕組みを ExtIO(エクスターナル・アイオーまたはエクステンド・アイオー)と呼びます。HDSDRは ExtIO を介してSDR受信機を操作することができます。そのソフトウェアとハードウェアを結びつけているものが、ExtIOプラグイン(以後、プラグインとよぶ)であり、ハードウェアごとに用意されています。

 (1-3)にて紹介した SDRPlay社の HDSDR – V2.76A (13TH JUL 2018) については、同社の一部製品に対応するプラグインがインストールの中に含まれますが、それ以外の最新の受信機(SDRPlay社のRSPdxなど)や RTL-SDR を操作するためには、それぞれのSDR受信機に対応したプラグインを、HDSDRのインストール・ディレクトリへコピーしておく必要があります。多くの場合、HDSDR のダウンロード・サイト(http://www.hdsdr.de/hardware.html)において、その入手先(リンク先)が紹介されています。

 プラグインのファイル名は ExtIO で始まります。インストール・ディレクトリの中に、複数のExtIOプラグインが存在する場合、HDSDRの起動時に選択を求められますので、利用するSDR受信機用のプラグインのみをインストール・ディレクトリに残すとよいでしょう。

(1-5) DRM復調用ソフトウェア Dream

 オーディオ入力に入るデジタル信号からアナログ音声を取り出すためのソフトウェアであり、オープンソースとして知られています。既に開発は終了していますが、ソフトウェアは SourceForge の Dream のサイトからダウンロードできます。そのうち、筆者の推奨バージョンは最新版 2.1.1 ではなく、1.17 です。そのバージョンを入手するには、1.17ダウンロード・サイト(https://sourceforge.net/projects/drm/files/dream/1.17/)から入手してください。複数のアーカイブが置かれていますが、筆者はこのうち、アーカイブ・サイズが最も小さい Dream-1.17-qt2.zip を選択しています。 推奨バージョンを 2.1.1へ変更しました。ダウンロードサイトは(https://sourceforge.net/projects/drm/files/dream/2.1.1/)です('20.11.29)。

 ダウンロードが完了できましたら、インストーラはありませんので、任意のディレクトリ(※1)に展開してください。

(1-6) AAC復調用DLL

 (1-5) の Dream には、デジタル信号から音声に復調するためのDLL(ダイナミック・リンク・ライブラリ)の取得が必要です。インターネット上には複数の入手先が存在しますが、筆者は、DRMデコーダ内蔵のSDRソフトウェアとして知られる SodiraSDR のインストール一式に入っていた AAC復調用のDLLファイルをお勧めします。

 Sodira SDR のダウンロード・サイト(http://www.dsp4swls.de/sodirasdr/main.html)からFull Download を選び、ダウンロードしてください。ダウンロード展開後、sodiraSDR\codecs\ にある libfaad2.dll を、(1-5)で入手した Dream のインストール先(※1)へコピーして下さい。これで、AACオーディオを復調する準備が揃いました。


(1-7) バーチャル・オーディオ・ケーブル

 DreamとHDSDRを「オーディオ信号」として、つながなければなりません。Windows系のパソコンでは、PC内部で生成された音声信号を「外部音声入力端子」のように入力する仕組みが標準実装されていません。これを実現するために Virtual Audio Cable(VAC)という仕組みがあり、いくつかのフリーウェア・ソフトが出回っています。

 筆者はVAC(https://vac.muzychenko.net/en/)を利用しています。最新版をインストールしてください。インストールが完了すると、Windowsからは、サウンド・デバイス(サウンド・カード)が追加されたように見えます。


(2) HDSDRの起動と受信

(2-1) HDSDRの起動とDRMへの切り替え

HDSDRを起動し、HDSDRのDRMボタン(2.80の場合はUSBボタン)をクリックしてください。続いて、2.76aの場合は DRMボタン(2.80の場合はUSBボタン)の上で右クリックし、Enter new bandwidth for mode というポップアップが表示されましたら、そこへ周波数帯域幅として 11.0 を入れて、OKしてください。ポップアップが閉じます。
KTWR_2_DRM_SW.png


(2-2) 受信周波数に合わせる

2020年6月現在、KTWRのDRM放送は、毎週日曜 2145-2215 の 7500kHz です。放送時間になりましたら、電波が出ていることを確認してください。この時、周波数を 7494.3kHz に合わせるのがミソです。下図が、7494.3kHzに合わせて、11.0kHzの周波数帯域幅で受信している状態です。
KTWR_1_TUNE_7500.png


(2-3) サウンド・カードの切り替え

HDSDRの音声出力先をバーチャル・オーディオ・ケーブルへ切り替えます。下図のように、サウンド・カード (Soundcard[F5]) にて、バーチャル・オーディオ・ケーブル(VAC) を選択してください。OKをクリックして閉じてください。
KTWR_3_VAC.png


(2-4) 音声周波数の上限の調整

HDSDRが出力する音域を広げる必要があります。下図のように、出力側のサンプリング・レートを 192000[Hz]24000[Hz]以上にセットしてください。閉じる時は右上の✖をクリックします。
KTWR_3_SampRate.png



(2-5a) Dreamの起動

復調用ソフトウェアの Dream を起動してください(以降の説明はバージョン 1.17 を前提とします)。

続いて、オーディオ接続を切り替えます。

Dream 1.17 においては、下図に示すように、メニューから(インストール済みの)バーチャル・オーディオ・ケーブル (筆者の場合は Line1(VAC))を選択してください。
KTWR_3_Dream.png

Dream 2.1.1 においては、メニューにて次のように選択してください。
Settings > Sound Card > Signal Input > Device > インストール済のVAC


(2-6b) オーディオフォーマットの確認

続いて、音声フォーマットの種類を確認してください。バーチャルオーディオケーブルから入力される音声の種類を選択します。通常はデフォルト( L+R ) の状態でOKです。

Dream2.1.1の場合は、メニューから次の設定であることをご確認ください。
 Settings > Sound Card > Signal Input > Channel > L+R

もし、上記設定にてDreamから音声が復調しない場合は、次の選択も試してみてください。
 Settings > Sound Card > Signal Input > Channel > IQ Pos Zero
 または
 Settings > Sound Card > Signal Input > Channel > IQ Pos Split

上記の設定が完了し、しばらくすると、下図のように、メタ・データが局名(KTWR Japanese)として表示されると共に、3つの赤色のインジケータが順に点灯します。このインジケータは左から(【KTWRのDRM受信に挑戦してみよう】(DRMの基本)において説明した) FAC、SDC、MSC の受信状態を示し、デジタル信号を復調する時に、誤り訂正に成功することで緑色に変わります。
KTWR_3_2_Dream_KTWR.png


この3個のインジケータが全て緑色になれば、音声が Dream から出力されます。
KTWR_3_3_Dream_KTWR.png


(2-6) Dreamによるスライド・ショーの表示

KTWRでは、DRMの送信時に、デジタル音声の他に、静止画も同時に送信しています。下図のように、Dreamの画面の中に、Data MOT Slideshow という表示が出ていれば、「2」をクリックすることで、MOT Slideshow Viewer がポップアップされ、静止画を受信することができます。
KTWR_3_4_Dream_KTWR.png


0430_slide2.png


なお、筆者の環境では、HDSDR 2.76a 及び Dream 1.17のバージョンにて動作を確認していますが、HDSDR 2.80 及びDream 2.1.1 の最新版を利用すると、スライド・ショーを表示させることができませんでした。スライドショーは Dream 1.17 を、同じMOTでもスライド・ショーとは異なるwebデータを表示させるには Dream 2.1.1 が必要です。なお、受信後のデータは Dream をインストールしたフォルダの中に記録されます。

【2020年6月29日追記】
2020年6月28日の番組で、webデータが送信され、HDSDR2.76a と Dream 2.1.1 を利用しました。A20 ヤマハのリモート合奏アプリ、DRM受信へ応用 ('20.06.29) をご参照ください。)

DRM放送によって、短波帯でも、ノイズが無い高音質なデジタル音声放送を楽しむことができます。


【本記事のリンク】
 【KTWRのDRM受信に挑戦してみよう】(DRMの基本)
 【KTWRのDRM受信に挑戦してみよう】(DRMの受信手順)

【関連記事】
 A20 ヤマハのリモート合奏アプリ、DRM受信へ応用 ('20.06.29)

【参考文献】
 DRM Handbook (drm.org)

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http://radio-no-koe.seesaa.net/

ラベル:KTWRDRM
posted by ラジオの声 at 07:54| 短波放送 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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