2021年06月15日

A21 民放AM各局、FM転換の方針を示す

民放AMラジオ44局が共同で記者会見し、28年秋めどにFM局への転換をめざすことを表明した。

これは 2021年6月15日、「ワイドFM(FM補完放送)対応端末普及を目指す連絡会」幹事局(TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送)が、オンラインで記者会見したもの。

◆分科会における検討の経緯

この問題については、平成31年(2019年)3月27日、総務省で開催された「放送事業の基盤強化に関する検討分科会」までさかのぼる。この分科会では議題の一つとして「AMラジオのあり方について」が取り上げられ、民放連が民放AM各局からのヒアリングに基づき、AM停波を含む制度設計の見直しを総務省へ要望したことに始まる。

その回(放送事業の基盤強化に関する検討分科会(第4回))において、総務省が「FM補完放送に関する資料」としてAM局の現状を提示した資料は『AMラジオ放送のFM補完中継局に関する資料』(総務省 '19/03/27)である。また、この回では、調査会社より『ラジオ受信機・聴取状況に関するアンケート調査結果(速報版)』 という調査結果を提示した。ここには、FM補完放送を受信できるラジオについての認知度や普及状況についてまとめられている。FM補完放送の存在については、どの年代も 60〜70%が知らない、と回答する一方、インターネットで放送されていることは、程度の差はあれど、半数以上が知っている。

その一方、民放連からの要望については、『(第4回)議事要旨』 から読み解くことができる。その内容は、おおむね次の通り。

@ラジオ局の現状について・・・

 1) ラジオ社の経営、特にAM社の営業収入はこの26年でピーク時(バブル時)の60%減。FM社もピークの2000年から35%減。

 2) ラジオ営業収入は25年までマイナス基調と予想される。

 3) これに加え、AM局固有の問題として送信所の更新問題がある。高いアンテナとラジアルアースを設置する広大な面積を必要とし、関東局の場合は、高さが120メートルあり、東京ドーム並みの広さにラジアルアースを張り巡らせている。その寿命は50年とされる。これらの建て替え等にあたっては、広大な面積や国際間の調整など、困難な問題に直面する。これが10年先の設備投資計画を困難にしており、AM局共通の問題である。

 4)AM設備の維持に加え、FM補完局の整備を進めているが、送信コストを抑え、番組制作や報道体制の強化に回したい、という期待がある。

AAM各局からの主な要望・・・

 1) FM補完局制度の見直し。AM放送事業者の判断で、AMからFMへの転換、もしくは、併用することを全国的に可能としてほしい。

 2) リスナーの利便性向上と周波数の有効利用のため、FM同期放送の普及と推進の支援をお願いしたい。

 3) FM放送のトンネル内再送信を普及してほしい。

この分科会の最後に、民放連より「47局のうち、早期にアンテナ更新が必要な場所が1か所ある」という回答があり、総務省の副大臣より「民放連の要望に対し、より良い解決策の検討と議論をお願いしたい」との発言でしめくくられた。


◆分科会における専門家による結論

この分科会の検討結果は、放送事業の基盤強化に関する検討分科会(第11回) を経て、『放送事業の基盤強化に関する取りまとめ』 として、20年6月に公表され、20 年秋をめどにAM停止を伴う実証実験についてその内容の具体案を公表すべきであることや、2023年の実証実験としてのAM停波までに関係者が課題に取り組み、2028年の再免許までに全国的な制度となるように整備すべき、と提言された。

◆パブリックコメントの実施とFM転換方針の決定

これを受けて、総務省は 7月から10月にかけてパブリックコメントの募集を行い、11月、『民間ラジオ放送事業者のAM放送のFM放送への転換等に関する「実証実験」の考え方及び意見募集の結果の公表』を公表した。これをもって、28年からのFM転換を実現することとなった。

◆FM転換方法について

しかしながら、21年6月15日の会見に参加した44局すべてが、AM波を停止するという意味ではなく、局個別の判断により、2つの流れとなる。1つは、28年秋をめどにFMを親局とし、AMを停波、または、FM補完局を親局としつつAM放送を補完(AM併用)とする案が考えられる。国策としての地上デジタル移行とは異なり、ラジオ局の経営状況に応じた自主的な移行である。

◆FM転換を実施する各局の状況(随時更新)

一部報道によると、28年以降のAM停波に向けて実証実験を計画している局は21局(うち早期にAM停止の実証実験を希望している局は一部)と伝えられている。44局の方向性が判明次第、以下のリストを順次更新する。

 ◎  AM停波を表明している局
 〇  AM停波を計画し、実証実験に参加
 @  AM停波を計画し、実証実験に参加
    (28年以降のAM停波時期は未定)
 A  実証実験に参加し、AM停波の可否を検討
 △  AM停波を計画するが、時期の決定を保留
 ✖  AM補完(AM併用)の方針を決めている局
 無印 併用か停波か、の表明待ち
 (注)この表は筆者が独自に集計しているものであり、間違いが生じる可能性をご容赦願います。

 青森放送
IBC岩手放送
 東北放送
 山形放送
 ラジオ福島
◎TBSラジオ
◎文化放送
◎ニッポン放送
 栃木放送
 茨城放送
 アール・エフ・ラジオ日本
 新潟放送
 信越放送
 山梨放送
 静岡放送
A北日本放送
 北陸放送
A福井放送
 CBCラジオ
 東海ラジオ放送
 岐阜放送
 KBS京都
 MBSラジオ
 朝日放送ラジオ
 ラジオ大阪
 ラジオ関西
 和歌山放送
 山陰放送
 RSK山陽放送
 中国放送
 山口放送
 四国放送
 西日本放送
A南海放送
 高知放送
 RKB毎日放送
 九州朝日放送
 長崎放送
 熊本放送
 大分放送
 宮崎放送
 南日本放送
 琉球放送
 ラジオ沖縄

なお、44局に不参加(AM送信が主体を継続)の局は次の3局。

 北海道放送
 STVラジオ
 秋田放送


◆NHKについて

NHK自身の報道では、NHKについては「2025年度に音声波をAM1波とFM1波の2波にする方向で検討を進めています。NHKは放送法で、AM放送とFM放送の実施が義務づけられており、今後も、AM放送を維持してまいります」との見解を発表した。第2放送は縮小する方向に変わりはない。

◆私見

当ブログをお読みのリスナー各位には、地上波デジタルの移行とは事情が異なり、今回の発表が44局すべてのAM電波を停止させるものではないことをご理解いただき、大出力アンテナ設備の更新時期を控え、送信設備よりも番組制作や報道体制の拡充に経営資源(資金)を集中させたい事や、維持費用が安いFM送信への移行、インフラは携帯会社の役割、というラジオ各局の事情をやむなく理解するものです。そのため、筆者としては、絶対的に反対の立場をとりません。

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posted by ラジオの声 at 00:10| 短波放送 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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